君と奏でるノクターン
「楽譜通りの完璧な演奏より、もう1度聴きたいって、思ってもらえる演奏をしたいだろ」


「言うじゃないか、ギムナジウムの坊や」


「やだ~おじさん。詩月は音大生で、ミヒャエルと2つしか違わないのよ」

ミヒャエルは師事しているフランツ教授が、小言を言わず「良し」と、認める演奏をする学生を、詩月の他に知らない。


――コンサートも酒場も、レッスンであろうと、詩月の演奏の先には聴き手がいる

ミヒャエルは、「師事している教授だって聴き手の1人だ」という、詩月の考え方が何となくわかった気がする。

だが、フランツ教授が完璧なヴァイオリンマシーンを育ていると言うのは、聴きづてならない。


――お前の演奏が型破りで自由すぎるんだ


吠えるくらい声を大にして言いたいのを我慢する。

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