君と奏でるノクターン
「……ミヒャエル」


イヤな奴に出くわしたなと、内心思うが顔には出さない。


「帰るのか?」


「ああ、雪がひどくならないうちに」


「何だか、顔色が悪いな」


「こう、寒くてはね」


「そうか? 今日はまだそんなに寒くないけど」


「日本は、こんなに寒くない……」


「直ぐそこに喫茶店がある。少し暖まらないか?」


「遠慮しておく。直ぐそばに駅が見えてるのに、引き返したくない」


「付き合いの悪い奴だな」と言いたげな顔を向けるミヒャエル。


詩月はミヒャエルを 振り切るように先を急ぐ。


「待てよ、『ROSE』の着信音の相手とは話せたか?」


ミヒャエルが口角を上げ、詩月を見下ろす。


「……意味がわからない。君に話す必要はない」

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