シンデレラの落とし物
「いろいろ考えてたとは思うんだけど」

「いろいろ?」

「うん」

「たとえばとんなこと?」

「だから、それは……って、いえないよ!」

あ、あぶない。危うく誘導されて口を滑らすところだった。心のなかで胸を撫で下ろす。

「くそっ」

はぐらかされて残念そうに苦笑いを浮かべた秋の表情が、ふと真面目なものに変わる。
秋の瞳が美雪の全身に変わったところがないか探るように動く。

「とにかく、無事でよかった」

美雪はその暖かな声に包まれる。

「ありがとう」

秋の瞳を見上げ、心からの感謝の言葉を述べた。

「しゅーくん、もうはなしちゃだめだよ」

まだ納得していないアイが、両手を腰に当てたまま、長身の秋を下から怒った目で見上げている。

「ああ」

秋はふっと笑うと、大きな手のひらでアイの頭を優しくポンポンと叩いた。

「もう見失わない」

秋が美雪に向かって手を伸ばす。大きくがっしりした手が美雪の手をしっかりと包む。驚いた美雪が顔を上げるとぬくもりを感じられる温かなまなざしとぶつかり、言葉をなくす。


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