シンデレラの落とし物
「アイちゃんは将来、商売上手になるな」

無邪気な笑顔を思い出して秋が笑う。

「どうして?」

「いい客引きセンスしてる」

確かにそうかもしれない。迷子を助けてお店に戻ったら、助けられた者はなにも買わないわけにはいかないだろう。小さいのにしっかり者だ。

でも。
いまのわたしの頭の中は違うことでいっぱいになっている。
愛の店を出てから当たり前のように繋がれた手のことで、いっぱいになっている。
全神経が秋と繋がる右手に集中して、話をする余裕もない。美雪は繋がれた大きさの違う手を魅入られたように見つめた。

「女の子って小さい頃から妙にしっかりしてるとこあるよな」

「うん……」

感心している秋の声も、本当に届いているのかうわの空。

「美雪ちゃんも小さいときはあんな感じだったの?」

「うん」

「例えばどんな?」

「うーん」

「……?」

さすがに秋も、ぼんやりと歩く美雪の異変に気づいた。

「美雪、聞いてる?」

さりげなく名前を呼んでみる。

「うん」

先ほどと変わらない気の抜けた返事。何に気を取られているんだ? 秋は首を傾げた。

「美雪?」

「うん……ん? なに?」

ようやく我に返った美雪が、夢から覚めたような顔を上げる。
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