シンデレラの落とし物
「どうした?」

「あ……うん、手が」

「手?」

手がどうした? 秋は聞き返す。

「もうアイちゃんいないのに、手をつないでるなぁって」

「もう見失わないってアイちゃんと約束したからね。もしかして、オレと手を繋ぐのいや?」

「えっ!? あの、いやじゃないんだけど、わたし……手汗、かいちゃうかも」

「そんなの気にしないよ。だから美雪も気にするな」

「は、はい」

よし、これで問題は解決したな、と満足そうに頷くと秋は歩きだした。立ち止まっていた美雪は、手を引かれ、軽く引っ張られるようにして慌てて歩き始める。歩きながらはたと気づいた。
秋くん、わたしの名前呼び捨て……。
自然に「美雪」っていってた。『ちゃん』がなくなっただけなのに、不思議。ふたりの距離が縮まったような、特別な響きに感じられる。
手をつないで、名前を呼ばれて……秋くんは自然に振るまってるけど、単純なわたしは意識してしまう。
恋愛経験が少ないわたしには異性と手を繋ぐだけで一大事なのに、秋くんは何をするにもスマートで、難なくこなしている。
わたしは追いかけるだけで精一杯で、息切れがしてどきどきがおさまらないよーーー。
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