シンデレラの落とし物
こんなロマンチックな雰囲気になるくらいだったら、中でワイワイしたほうがよかったのかも……。
秋も美雪もお互いを意識して会話が止んだところで、タイミングよくワインが運ばれてきた。

「それじゃ……乾杯しようか」

会話の糸口がみつかり、ホッとしたふたりはワイングラスを掲げる。

「なにに乾杯?」

「そうだな。うん、美雪のサンダルに乾杯!」

「ええっ? あ、乾杯~?」

秋の口から出た意外な言葉に慌てながらカチンと、ワイングラスを合わせた。

「なんでミュールに乾杯なの?」

美雪が首をかしげる。

「あーそれ、ミュールっていうのか」

なるほどと頷く秋は話を続ける。

「今日は大活躍だったろ? 大聖堂で地面にぶっ刺さるし、オレがジプシーに狙われたときは派手にすっ飛ばされてた」

「あはは、そうね……」

いいことなのか悪いことなのか。思い返してみると情けないことばっかりだ。
美雪の口から、渇いた笑いと呻き声がもれる。
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