シンデレラの落とし物
「おかげでこうして話ができたんだから、きっかけをくれたミュールに乾杯だよ。まぁ、オレが詩音じゃなくて美雪は残念かもしれないけど」

再び詩音の登場に、美雪は苦笑する。

「そこ、こだわるね」

「けっこうショックよ」

胸の前で腕を組んで、がっかり首を落とす秋を前に、美雪の口からとんでもない言葉が出た。

「秋くんの、表情豊かな深い声も好きだよ」

自分の口から「すき」という言葉が自然に出てきたことに美雪は驚いた。が、とき既に遅し。いった言葉は取り消すことはできず。

「マジで!? うわ~マジで嬉しい! ありがとう」

好きという言葉を特別に意識するわけでもなく、素直に喜ぶ秋に美雪はやられてしまった。
変に意識してこわばっていた肩から力が抜けて、つられるように笑顔になる。

そのあとは会話も弾み、運ばれてくるムール貝の酒蒸しやボンゴレ、ヴェネチアの海で捕れた新鮮な魚介に舌鼓。
いただいた料理はどれも感動するくらい美味しくて、時間を忘れて堪能した。

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