それは薔薇の魔法




「あと、枯れた白薔薇は""生涯を誓う"、つぼみは"処女の心"という意味もあるんですよ」


「花だけでなく、つぼみにも意味があるのか」



少し驚いたような表情を浮かべるシリル様にくすり、と笑みがこぼれる。


そういえば、わたしもこのことを初めて知ったとき驚いたかしら。



「ではオレンジの薔薇は?」


「はい。オレンジの薔薇は"絆"、"信頼"、"魅惑"、そして"恋愛の達人"でしょうか」



黄色は"あなたに恋します"、"嫉妬"


ピンクは"美しい少女"、"上品"、"温かい心"、"愛を持つ"


緑は"あなたは希望を持ちえる"


紫は、と言いかけてくすり、と笑みをこぼす。



「ローズ?」


「あ、すみません……気にしないで下さい」


「そう言われるとますます気になるのだがな」



そう言われればそうかもしれない……



「本当に、なんでもないんです。ただ……」


「ただ?」



シリル様の少し悪戯な光を浮かべた瞳がキラリ、と輝く。



「紫の薔薇の花言葉が、シリル様にふさわしいと思っただけですわ」



そう言って目線を薔薇に向ける。


濃い紫の薔薇……シリル様の瞳と同じ色ね。



「花言葉は"誇り"、"気品"、"王座"そして"尊敬"。淡い紫には"気まぐれな美しさ"なんて意味もあるんです」



いつも気品溢れていて、誇り高くて……


この国をいずれは背負うことになるシリル様。


全てにおいて尊敬してしまう。


それに、こうやってただの庭師であるわたしにシリル様は話しかけて下さる。


気まぐれに、わたしの心を彩ってくれる。



「シリル様に、ぴったりですわ」



にっこり、と笑ってシリル様を見ると照れたように笑っていて。


初めて見る姿に少し驚いたけれど、なんだかその存在を近くに感じて。



少しだけ、嬉しく感じた。







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