予想外の恋愛
居酒屋に入り、アルコールと料理をいくつか頼んで乾杯した。
「ああー仕事終わりのビールって最高だよなあ」
「体に染み渡るよね」
「俺、仕事中も夕方になったらビールのことしか考えてない日とかあるよ」
「ええ?なにそれー」
よかった。普通に話せている。
綾の二次会でお姫様抱っこされたり、キスしそうになったりで…普通に振る舞えるか心配していた。
やっぱりこの人かもしれない。私がこの先一緒にいるべき人は。
「仕事は忙しいの?」
「そこまでかな。残業は多いけど休みはきっちりもらえてるし有給もどんどん使えっていう方針だから」
「へえ。そういうのって正社員ならではじゃない?自分とは無縁であんまりピンとこないな」
「年二回ボーナスも出るしな。結構いい会社だと思う」
仕事を頑張っている人はなんとなくかっこよく見える。
それは男も女も関係なくて、なんだかキラキラして見えるのだ。
ネクタイを緩めてビールを飲む近藤くんは少し色っぽかった。ただし、さっきから夢中で枝豆をひたすら食べている。
「ナギサはカフェで働いてるんだっけ?そういうのも憧れるけどな」
「ん…まあバイトなんだけどね。楽しいよ」
「接客業ってめんどくさい客とかいたら大変そうだよな。嫌なこと言われたりしない?」
「別にないよ。喧嘩はしょっちゅうするけど…」
そこまで言って、ハッと口をつぐんだ。
「え?喧嘩…?」