予想外の恋愛


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近藤くんを”ご飯にいこう”と誘うと、”喜んで”と言ってくれた。

そして今日、夜に駅で待ち合わせをしている。お互いの仕事が終わってからなので、あまり長い時間はとれなさそうだ。

先に待ち合わせ場所に着いて待っていると、こちらに向かって走ってくる人影を見つけた。


「ごめん!待たせちゃったな」


息を切らしながら私の前で立ち止まった近藤くんは、だいぶ急いで来てくれたのだろう。


「今来たとこだよ。誘ったのはこっちだし全然ゆっくり来て良かったのに」

「そういう訳にもいかないだろ?ナギサが誘ってくれて嬉しかったし、楽しみにしてたから」

「あ、そう…」


相変わらずすごいことをためらいなく言う人だ。
言ってる本人はまったく普通なのに、こっちばかりが恥ずかしい目に合うのはおかしいと思う。


「何食べたい?」

「居酒屋かなと思ってたんだけど…」

「オッケー。そういうムードのなさがナギサっぽくて良いな」


それは褒めているのかけなしているのか。
ムードが無いと言われて喜ぶ女子はいないだろう。
そんなことをいう近藤くんこそムードの欠片も無いんじゃないか。
だけどこの人はそんなことを嫌味で言うような人じゃないのは、私自身がよく知っている。

今も近藤くんは、昔と同じように優しい。
隣を歩く私の歩幅に合わせてくれて、時々こっちを見て私の様子を確認してくれている。


「ここでいい?」

「うん」


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