予想外の恋愛
マチと別れたあと、久しぶりに実家に向かった。
社会人になった時に一人暮らしを始め、電車で30分程のところにある実家には月に一度帰るようにしている。
「ただいまー」
自分で鍵を開けて中に入る。
一人暮らしの自分の家とは違う、懐かしい匂いに気持ちが落ち着いた。
「あらナギサ!来るなら来るって言っといてよー」
「お母さん、今日仕事休みなんだ?」
「たまたまね。晩御飯食べていくの?」
「食べる食べる!」
父と母、それと弟が暮らすこの家を出てから、母の手料理の有り難さを知った。
私自身、料理は嫌いではないけれど、いくら凝ったものを作っても1人で食べることを思うと、自然と手抜き料理しか作らなくなってしまった。
あいにく自分の手料理を食べさせたいような相手もいない。
「ミナトは?部活?」
「高3なんだからもう引退してるわよ。今日は遊びに行ってるわ」
「ミナトがもう高3…どうりでお姉ちゃんって呼んでくれないワケだ…」
「すっかり男臭くなってるわよ」
ミナトは私の弟で、7つ年下だ。
昔は可愛かった顔がすっかり大人の男になりつつある。私と並んで歩くと、同い年ぐらいに見える…らしい。