予想外の恋愛
「とりあえず、映画の上映が13時半からなんだ。歩きながら話そう?」
中島さんにそう言われ、何故か今私は映画館に向かって中島さんの隣を歩いている。
チラッと隣を見ると、すらっとした姿で優雅に歩く王子様。
Tシャツの上にジャケットを羽織り、細身のジーンズを履いている彼は、私なんかが隣を歩くのは恥ずかしいほどにかっこいい。
「朝田とさ、今日出掛ける予定だったんだ。営業先の人に見たい映画のチケットもらって、それで…」
「は、はあ」
「だけど一週間前ぐらいに朝田から、行けなくなったって言われて。俺一人で行くのもなーと思ってたら、代わりにナギサちゃんが来るからって言われたよ」
「は、はあ?」
私が朝田さんに無理矢理誘われたのは、その後ということになる。
私に電話をかける前から、私がここに来ることは決まっていた…?
なんだあいつは。
その時、はっと思い出した。
『協力してやろうか』
…まさか。
あの男…行けなくなったなんて、絶対嘘だ。
本気で私が中島さんのことを好きだと思っていて、余計なことをしたに違いない。
「…ナギサちゃん?」
考え込んでいたせいで心ここにあらずだった私は、中島さんに声をかけられて慌てて返事をした。
「は、はい!」