予想外の恋愛


「例えばよ?」


マチが静かに口を開いた。


「あんたと近藤くんが、今この歳でこの環境で初めて出会ったとして、付き合うことになったとしたら…それなりに上手く行くと思うわよ。だけどそれは今は”大人”だから」

「つまり…お互いに子供だったから上手くいかなかった?」

「高校生なんてそんなもんよ。お互いがお互いに関心持って欲しいから、わざと冷たくしたり、気を引くことして。結果それが駄目な方向にいっておしまい。
幼ければ、気持ちを素直に言葉に出来るけど、高校生ってちょうど微妙な時期じゃない?大人ぶった子供っていうか」

「まあ、確かに」

「だから近藤くんだって、あんたに言えてないことがあるんじゃない?少なくとも、後悔するぐらいにはね」



私は、付き合っていた時にもっと気持ちを伝えればよかった、と思った。
もっと好きって口にしていれば、素直になれれば…。

内容は違っても、近藤くんにも同じように伝えきれていない気持ちがあるのかもしれない。

この間の夜、そのうちの一つを打ち明けてくれたのかもしれない。



「あんたが近藤くんと付き合ってたことを思い出して辛くなるのは、そうやって心残りなことがあるからでしょう。いい加減に、きれいな思い出に変えたら?」



マチの言葉が突き刺さる。

一度、近藤くんと向かい合って話す時間が必要なのかもしれない。




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