予想外の恋愛
あろうことか朝田さんが伸ばしていた腕を折り曲げて、肘を床に付けた。
さっきより急激に近くなったお互いの顔に、息も出来ない程心臓がばくばく鳴り響く。
「嘘つくな、ナギサ」
もう少しでキスしてしまいそうな距離で、朝田さんがかすれた声でそう言った。
その口から自分の名前を呼ばれるだけで、どうして私はこんなにもドキドキしてしまうのだろう。
「お前…何してんだよ、いつもより気合い入れた格好しやがって」
ゆっくりと、だけど少し強引に、私の唇に付いているグロスを親指で拭う朝田さん。
その仕草に動揺しながら、私を見つめる朝田さんから目を離せない。
金縛りにあったように体が固まって思うように動かない。
どうして彼がそんなことをするのか、それを考える余裕なんて全くなくて、ただ吸い込まれるようにその目に釘付けになる…。
「っ…!」
急に、朝田さんが体を離して起き上がった。
「お前…なんて顔しやがる」
さっきの俺様な態度はどこへやら、焦ったような様子に私のほうが混乱する。
「へ?」
「無意識かよ…ったく」
ほら、と手を差し出され、恐る恐るその手を握るとぐいっと起き上がらせてくれた。
…あの行動は一体何だったのだろう。
朝田さんの妙な行動のおかげで、まだドキドキしている。
しかもしばらく収まりそうにもなくて参る。