少女Fの思惑

じゅーきゅう

そういえば一ノ瀬は頭もよかったなと思考を巡らせた。
「光~、おーい」
桜もそんなに悪くなかったっけ。うんうん、恋だけじゃなくて勉強にも励んでるなんていい子だなぁ。
「光ってば!」
「いった!」
びしっと教科書で脳天を叩かれて思わず声をあげた。
ああ、そうだ。今は放課後の教室で4人向き合って勉強中なんだった。
「ここってどうするの?」
「ここはこっちの問1で出た答えを使って…」
「あぁ、なるほど」
「ね、光こっちはー?」
「そっちは…ここのthatの先からもってくんの」
「あ、ほんとだ」
「…光、『とぜん』ってなに?」
「は?……『徒然(つれづれ)』だよバカ!」
「バカはないだろー、バカは」
「うっさいバカ!それくらい自分で調べろ!」
「光怒んないで、ね?」
「ほら、アメあげるから」
「こどもかっ!」
ばっと晴生からアメを奪い取ってイチゴ味のアメちゃんを舌の上で転がす。その甘ったるさに口を閉じ、まだそう小さくもないそれを噛んだ。
「光落ち着いた?」
「…ん」
「じゃ、こっち教えて」
「自分で考えろ」


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