少女Fの思惑

にじゅういち

「えっと、宮森さん?…めんどくさかったら私がやっとくよ?」
「えっ、ううん!大丈夫だよ」
宮森さんと二人で先生のお手伝い。パチンパチンとホッチキスの音だけが教室に響く。本日、日直だった私は先生に捕まりました、はい。そこにちょうどきた宮森さんも…。
なんかそこまで仲良くないし、気まず…。
「あ、の…」
「…はい」
「岩泉さんって、優しいね」
「は?」
「ご、ごめんっ…」
「あ、いや…」
思わず聞き返すと宮森さんは慌てたように謝った。
え、てかなに、優しいって。照れるわ。
「全部やらされるかと思った?」
「えっと…」
少し目を泳がせてから申し訳なさそうにこくんと頷いた宮森さんを見て苦笑した。
「さすがにそんなひどいことしないよ。宮森さんみたいにかわいい子におしつけるなんて」
「かっ…かわいくなんてないよ!私は岩泉さんのことちょっとこわいって思ってたけど、思ってること全部言える人ってすごいっていうか、素敵だと思うよ」
なにこのかわいい生き物。私が男だったら押し倒してるぞ。でもごめんね、わたしはあなたと関わっちゃだめなんだ、多分。
「そんないい人でもないよ、私は」
パチン、とホッチキスを持つ手に力を込めた。


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