少女Fの思惑

にじゅうなな




バカだ。バカだ私。
なんかもうこのまま走り去りたい。
「俺が自分のことを…?」
「あー、えっと、やっぱ気にしないで」
「そういうふうには思ってないよ」
「…そう」
「俺は自分の顔は、面倒な顔だと思ってる」
「それは嫌味にも聞こえるけど」
しまったと思ったが、どうやら私は思ったことすぐ口に出してしまうみたいだ。
「そうかもね。…でも望んでもいないのになぜか周りから期待はされるし、人は集まってくる。そのおかげで友達が減ることだってあるし、自由な時間も限られてるんだよ。俺は普通でよかった…」
「人気すぎるのも大変だね」
「好意はもちろんうれしいけどね」
…少女漫画とかの中のモテ男君って自分がイケメンだってわかってて魅せようとするやつか、わかってない振りする奴だけだと思ってた。
一ノ瀬はわかってて、それが面倒で…なんていうか、寄ってくる女の子がじゃなくて、自分のことを責めるんだ。
言葉にしてしまうとナルシストみたいだけどちょっと違う。でもだから余計にモテるんだろうな。
「ありがとう」
「え、なにが?」
「女の子とこんなに普通に話したり、悩みを聞いてもらえたのって久しぶりだったから」
「…そう」
よかったね、なんて他人事だろうか。





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