とろけるジャムの隠し味
とろけるジャムの隠し味

告白と粘土細工



「えっ!今、なんて…?!」


目の前で起こった出来事に驚いて、思わず持っていた筆を落っことしてしまった。



水彩色鉛筆と、濃い亜鉛。

大きな窓際の下で散らばった筆。

ささくれのできた広いテーブルに、六月の湿気が漂っている。



美術室の匂いがわずかに残った角の渡り廊下で、北見恵梨はクラスメイトに呼び出されているところだった。



「だから、北見のことが好きなんだ。付き合ってください!」



恵梨の大きな目が点になる。
冷静になろうと深呼吸をして、落とした筆を拾った。


洗ったばかりの筆から小さな雫が落ちる。





< 1 / 9 >

この作品をシェア

pagetop