《大.落》♥ やらかしちまって!〜眠り姫★
歩が自分のハサミの刃先を見ながら、
「やっぱり秀馬さんには敵わないのかなぁ、 俺」と呟き、指を入れハサミをカシャカシャと動かしていた。
「そんなこと無いですよ」
思わず一子は、歩の腕に手を置いていた。腕に置いた一子の手の上に、歩がポンと手を乗せ一子を見つめる。
「本当? なら、一子ちゃんは次にカットするのが俺でもいいの?」
「え? ……あ………はい、もちろん」
ーーー真田さんにカットしてもらって、今の髪型を人生至上最高に気に入っている。だけど、真田さんはカリスマ美容師だ。お金もかかるし、予約だって中々取れないと雑誌に書いてあった。真田さんには簡単にはカットしてもらえないって、ちゃんとわかってる。
「嬉しいなぁ。じゃあ、来月は一子ちゃんの髪を俺にカットさせてね〜」
ポンポンと一子の手を二回軽く叩き、楽しそうに笑う歩。
ーーー良かった。笑ってくれてる。失礼な末子のせいで歩さんを傷つけてしまったのは、少し心配だけど……。
「末子の事、本当にごめんなさい。あの、コーヒーでも飲みます? 末子が帰るまで、お茶でもしませんか?」
なんとか歩が、末子の失礼な言動を忘れてくれるように気分転換させたかった。