《大.落》♥ やらかしちまって!〜眠り姫★
通りの向こうにタクシーが停まっていた。
「あそこにタクシーが……こっちに来てくれないかなぁ?」
手を上げかけた一子は、タクシーが客を乗せているのに気がついた。
ーーーあ、行っちゃった。残念。
「一子ちゃん」
呼ばれて振り返ると歩に手を握られていた。
「あっ…」
「タクシーが来るまで〜手繋ぎたい。いい?」
「えっと……」
本当は、相当困っていた。
ーーーさっきのおでこにキスといい、手をつなぐ? なんかこういうのって………。
「あ、タクシーきちゃったよ〜。じゃ、一子ちゃん、お大事にね〜また、連絡するからさぁ」
ぎゅっと握られた手に歩の男らしい手の温もりを感じて、なんとなく焦ってしまう。
ーーー困るよ。緊張する。
歩の手が、再び一子の体を引き寄せる。
タクシーが停まって、後部座席のドアが開いた。