《大.落》♥ やらかしちまって!〜眠り姫★

通りの向こうにタクシーが停まっていた。


「あそこにタクシーが……こっちに来てくれないかなぁ?」
手を上げかけた一子は、タクシーが客を乗せているのに気がついた。


ーーーあ、行っちゃった。残念。


「一子ちゃん」
呼ばれて振り返ると歩に手を握られていた。

「あっ…」

「タクシーが来るまで〜手繋ぎたい。いい?」

「えっと……」

本当は、相当困っていた。

ーーーさっきのおでこにキスといい、手をつなぐ? なんかこういうのって………。


「あ、タクシーきちゃったよ〜。じゃ、一子ちゃん、お大事にね〜また、連絡するからさぁ」
ぎゅっと握られた手に歩の男らしい手の温もりを感じて、なんとなく焦ってしまう。


ーーー困るよ。緊張する。


歩の手が、再び一子の体を引き寄せる。

タクシーが停まって、後部座席のドアが開いた。
< 210 / 342 >

この作品をシェア

pagetop