《大.落》♥ やらかしちまって!〜眠り姫★
「秀馬さん……店は、しょうがないとしても……山口さんの事情もわかるっすから。でも、俺、どんなことしても一子ちゃんだけは譲りませんから」
「歩」
電話を切ってから、可愛がっていた歩の信頼を失った気がしたし、後悔の波に飲み込まれそうにもなった。
だが、秀馬はすぐに思い直していた。
ーーー決めたんだ、後悔はしない。
彼女のこと歩には悪いと思う。安易な約束をしてしまった自分を反省している。
でも、歩に黙って彼女を密かに思い続けたり、思いながら譲るなんてことをしたら、いつか絶対に後悔する。
彼女を諦めるという選択肢が、少しも存在しないのだから、俺も彼女を譲れない。
ーーー耕三から聞いた歩の話が本当なら、こんなところでモタついてられない!
秀馬は、パーティー会場のあったホテルから走り出ていた。
懸命に走る秀馬の頭に肩に腕に足元に舞い落ちる雪。
弾む白い息が夜の街に浮かんでは流れていく。呼吸が乱れ、巻いていたマフラーが息苦しいと感じて外しながら周りを見回し走ってくるタクシーに手を上げた。
ーーー会いたい。
今すぐに会いたい。会ってこの腕に抱きしめたい。そうしたら、きっと彼女は、あのロバみたいに大きな瞳で俺を見つめてくるだろう。
頼むから、他の男に心を揺らさないでくれ。