《大.落》♥ やらかしちまって!〜眠り姫★
ガラガラと扉を開け玄関から外に出た一子と秀馬。
「送らなくて大丈夫なのに」
腕を組んできた一子を見おろしながら、秀馬は微笑んだ。
「ううん、送りたいの」
一子は、秀馬の腕にぴったり寄り添う。
ガラガラっと再び扉が開く音がして、振り返る一子と秀馬。
「真田さん」一子の母が扉から飛び出してきた。その様子は、やはり親子というべきか一子の行動に似ていた。
「さっきのあなたの言葉が頭に残ってしまって」一子の家族は、みんな目が大きい。一子の母も例外ではなかった。
大きい瞳を更に見開いて、まばたきを数回した。
「自分の子供を嫌いな親はいないわ。出来が良いとか悪いとか、そんな問題じゃないのよ。
理屈じゃないの親子って。自分の子供は、一生、大きくなっても子供だから……
おかあさんも、きっと真田さんに会いたいと思ってるんじゃないかしら?
だって、こんなにイケメンだし、立派なカリスマ美容師になったんだもの。私だったら鼻が天狗になりそうよ」
一気に話した一子の母は、言い終えると胸を押さえ、少し呼吸を整えるように呼吸していた。
「母さんったら、しゃべりすぎ」
「………」
秀馬は、微笑んだだけで何も答え無かった。
近づいてきて、一子の母は秀馬にまっすぐ向き合う。
「母親の事は、母親にならないとわからないものよ。子供には、わからない想いがあるの。これは、母親にしかわからないわ」
それから一子の母は、当たり前みたいに腕を伸ばして、背の高い秀馬を背伸びをして引き寄せぎゅっとハグをした。
「じゃあ、またね。気をつけて」
「……はい」
余韻もないまま、やる事をやりおえた力士みたいに、さっさと歩いて家に戻っていく母。
「はあ、母さんってば……言いたいことだけ言って……真田さん、なんかごめんなさい」
謝る一子の頭をクシャッとする秀馬。