《大.落》♥ やらかしちまって!〜眠り姫★

「ちょっと、母さん……踏み込み過ぎ」
不二子が母をたしなめた。


「ごめんなさい! 私聞きすぎよねー。ごめんなさいね」
しゅんとなる一子の母に秀馬は、笑う。

「いいんです。事実だし、隠すことでもないんで」

「ごめんなさい。真田さん」
一子も頭を下げた。

「俺こそ、すみません。なんだか雰囲気悪くして」

「そんなことないよ。おにいさんが来てくれてさ〜こう、パーって地味な家が明るくなったもん」三津子が両手を広げた。

「……なんかそれって、可愛い女の子に言うことみたいだなぁ」
茂が呟く。

「茂さんは黙ってて。イケメンがいるだけで明るくなるんだからさ〜」
眉間にシワを寄せる三津子。


「本当だよねー。真田さん、また来てくたね」笑顔を見せる不二子。


「ありがとうございます。ご馳走さまでした。また、おじゃまします」
挨拶をしてから腰を上げた。
土間へおりる場所で靴を履く秀馬。

ーーー真田さん、気のせいかなぁ。なんだかさみしそう。

靴を履くために丸くなっている秀馬の背中が、ひどく寂しそうに見えて一子は切なくなっていた。


「母さん、大通りまで真田さんを送るね」
土間へ下りて一子は、自分から秀馬の腕に手を置いた。
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