続*時を止めるキスを —Love is...—
肩に置かれた手で彼との距離がググッと縮まる今。……手の力で彼の怒り具合が充分に伝わってきますので、私は無言に徹しております。
「いいか?藍凪が自信を失っていたのも、価値を下げさせたのもオマエだ。女は傷つけるものじゃねえんだよ。
相手を輝かせるのも、くすませるのもすべては男次第だってよく覚えとけ。
ああ、因果応報って言葉知ってるか?
——もうオマエの手にはもう落ちねえよ。いいざまだ。指くわえて悔しがれ。確認するまでもなく、いい女だったってな!
……それと藍凪。こんなヤツの戯れ言にイチイチ耳を貸すな。怒るにも値しねえよ」
嘲笑と冷酷さを併せ持つ物言いにようやくすべてを察したのか、龍を見上げるタカシの視線は憎悪に満ちていた。
しかし、龍といえばどこ吹く風といった態度のまま。無神経男のほうが明らかに劣勢に立たされている。
こうして傍にいる私は、龍のあったかい言葉の数々でそれまでの溜飲が下げられた。
どんなに消化しようとしても叶わなかったのに、だ。
それと同時に、心は喜びでじんわりじんわりと埋め尽くされていく。——色々あったけど龍を好きになれて本当に良かった、と。
ただし、最後にきっつい視線とともに叱咤を受けたことはもちろん忘れてませんよ?
「……すみません」と、出来る限り逃げの姿勢で返すズルい女ですが、反応を見る限り彼は既に諦めてますね。
誰に向けたとも知れない、嫌味を存分に込めた溜め息をして長財布から一万円を取り出した龍。
彼はその諭吉さんをテーブル上に置いた。……いやいや、アイスだけなのに払いすぎだよ!
とはいえ、この修羅場っぽい状況でそんな反応も見せられず。彼に連れられてファミレスをあとにした。
……忘れていたけど、夕食どきで店内は賑わっていたのだ。
痛いくらいの視線を浴びながらの退場となり、アラサーは非常に居た堪れませんでした。