続*時を止めるキスを —Love is...—
勝ち誇った表情まで美しい柚さんが資料室を嵐のごとく去ってから、龍の顔を覗き込んで「……大丈夫?」と尋ねたところ。
「同族嫌悪だ」
彼が呟いたこのひと言の意味がすぐには分からなかったけど、あとあと考えてみて納得した。
身近にいい女といい男が揃っていても、現実はそうそう上手く纏まるはずもない。
それを教えてくれる人たちですしね?——ふたりが恋愛関係に発展するわけないわ、と。
そんな彼女は一人称の変化で分かるように、今夜も酔っ払いクイーンの冠を頭につけたらしい。
……って、ちょっと待とうか。タカシは面倒だから手近なところへ復縁迫ったわけ?
もしや二股にも気づかないような女を丸め込むのなんてちょろい、とか思われてた?
無神経の浅知恵でしょう、それは。いくら私がズボラだからってまかり通ると思うなよ……!
呑気に気が合うとか思っていたあの頃の私、心の底からどんまい。だって彼は無神経だもの、怒りは碇のごとく沈めようか。
手にしていたブランデーの一種、グラッパをぐびっと煽る。下らないギャグも水に流し、向かいのふたりに笑いながら言う。
「色々と心配して下さってありがとうございます、柚さん。円佳もありがとう。
でも、もう大丈夫です!過去は過去として、龍をもっと大事にしようと思ってますから」