続*時を止めるキスを —Love is...—


「それなら良かった。でも、なんか随分前のことみたいだね。
今日のリップ、例のアレでしょ?」

ホッとした声を出してくれた円佳の隣で、柚さんはグラスを傾けながら終始ニコニコしている。

「そうだよー」と頷きながら、バッグからさっとそれを取り出してみせた。


今手にしているのが、金色の輝きとクリスタルな下部のコントラストが美しいリップスティック。

このブランド特有の、いちじくの香りがする口紅は柔らかくて塗り心地と発色も素晴らしい。

グロスのみでは血色の悪くなってきたアラサーにとっては欠かせないひとつでもある。

これは余談だけど、金色のキャップに名前まで掘って貰える行き届いたサービスも相俟って、単純な私は円佳に続きブランドのファンになってしまった。

なお、ブランド創始者の女史の理念が彼女の美容指針という。どうりで私のコスメ好き宣言が鼻で笑われる筈だ。


“これね、婚活リップの異名もあるから、次の合コン気合い入れてよ?”

かつて、笑顔という名の脅しとプレッシャーを彼女に掛けられた。それも今では笑い話になっている。


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