君だけに、そっとI love you.
低い声はだんだんと掬恵が聞き慣れていた声に変わっていく。
「あれっ?」と思い掬恵がゆっくりと顔を上げる。
嬉しそうな笑顔を浮かべた周翼の顔が目の前に飛び込む。
──坂口くん!
別人を装う技を使うなんて……。
唖然として言葉を失う掬恵。
両手を合わせて申し訳なさそうな顔をしている周翼。
「ごめん、まさか、こんな下手な芝居に付き合ってくれるなんて思っていなかったから……」
機嫌を損ねた掬恵が両頬をプッと膨らませて「坂口くんのバカッ!」とひとこと言った。
「ごめん……、アイスを後で絶対におごるから──」
じろじろと目だけを動かして周翼の方を見る掬恵。
──アイス、絶対に食べたい!
めっそう、食べ物に弱い。
掬恵の目がキラキラと輝く。
「本当に、本当に、ホント……?」
「うん。映画が終わったら、食べよう!」
笑顔を取り戻す二人。