君だけに、そっとI love you.
周翼が帯の間から懐中時計を取り出して今の時間を確認する。
「あっ、いけない……。いそがないと!」
周翼が掬恵の手をとり映画館の中へ急いで入っていく。
息を切らせながらチケット売り場に到着をした周翼と掬恵。
周翼が息を整えながら少しはだけた自分の浴衣の胸元を軽く直す。
観る映画は前もって相談をしてもう決めていた。
邦画のコメディ。
しかも、思いっきり、笑えるの。
二人の意見は全く同じだった。
映画のチケット代、1300円。
「えっ!?ちょっと、安くない……?」って思った。
それは、今日浴衣を着てきたことに理由があった。
どうやら、坂口くんは事前に下調べをしていたらしい──。
“浴衣を着てきたお客様に特別割り引き有り!”
なるほど……。
坂口くん、将来は間違いなく倹約家タイプ。
その後、ポップコーンとメロンソーダを持って席についた。