少しずつ、見えるミライ
だいたい、いい加減、彼も変に思わないかな?

まさか自ら肉食お姉さんの巣窟に飛び込んで来ちゃったなんて想像もつかないだろうし、亜美ちゃんがいた頃はそこまでペット伝説も浸透してなかったから、この手の話は耳にしていないはずだ。

あちこちで過剰に反応してたら、彼もやりにくいに違いない。



.....あぁ、もう。

いろんなことを考え過ぎて、頭がいっぱいだ。

私は彼に普通に働いてもらいたいだけなのに、何なんだろう、この無駄な心労は。

まだ何も教えていないのに、早くも一緒にいることに疲れちゃった気がする。



だが、しかし、思わずハァ~っとため息を吐いた瞬間、彼が放った一言が、私の目を覚ました。



「髪、切っちゃったんですね。」

「へ?」

「長いのも似合ってたけど、俺は今の方が好きだな。」

「.......。」



え? どうして?

嘘よ、嘘、嘘。

だって、おかしいじゃない。

彼がそんなこと知ってる訳がない。



私が髪を切ったのは、二年も前のこと。

髪を切れば全てを断ち切れる気がして、悲しい思い出と一緒に、長かった髪をバッサリと切ったんだから.......
< 16 / 216 >

この作品をシェア

pagetop