少しずつ、見えるミライ
肩を寄せ合い、スマホを覗き込んでいると、また何かがパッと光った気がした。

何なんだろう?

やっぱりおかしいよな.......



「リリアさん、さっきから何かパッと光ってません?」

「そう? わかんない。それより、朝陽、まだ寝ないよね?」

「はい。」

「じゃ、もう一杯だけ飲まない? 」

「いいっすよ。」

「私の部屋に、多分、何かお酒あるから行こう。また下まで買いに行くの面倒だし。」

「えっ、だけど、いいんですか?」

「うん。」

「やった。リリアさんの部屋、見てみたい。だって、スイートとかですよね?」

「あぁ、うん。でも、半分以上、衣裳部屋とか、ヘアメイク用に使われちゃってるけどね。」



リリアさんはニコニコしながらエレベーターのボタンを押し、来るのを待つ間も、ふざけて俺のほっぺたを指でつついたりしていた。

誰もが認める歌姫なのに、ひとたびステージを降りれば、こんな風。

今や、お互いに、気を抜いて話せる存在なんだから不思議だ。



リリアさんに初めて話し掛けられたのは、確か、大学4年の夏。

オーディションで受かった夏フェスで、後列の方だったけど、バックに付かさせてもらった時だったと思う。

そこから一年ちょっとで、ツアーに呼んでもらえるまでになったんだ。

そう考えると、俺のダンサー人生も捨てたものじゃない。
< 170 / 216 >

この作品をシェア

pagetop