少しずつ、見えるミライ
11月に入って、朝陽がまたツアーに出かけたから、半年ぶりくらいに、一人で実家に帰った。

田舎から送ってきたリンゴをもらいに行くついでに、母に聞いてみたいことがあったから。



うちの父は、とんでもないろくでなしだった。

大した能力もないのに、根拠のない自信だけはあって、すぐに商売を変えては失敗し、借金を繰り返していた。

そして、その腹いせにキャバクラのお姉ちゃんやら何やらに手を出し、度々、母と大喧嘩。

この下らない連鎖を繰り返していたおかげで、私と妹は何度も転校したり、節約を強いられたり。

時には、何故か家に大金があることもあったし、突如として一文無しになったこともあった。

今、考えたら、とんでもない話だけど、子供の頃の私は、そんな明日もわからないような不安定な生活を、当たり前のように送っていた。



だから、私は修ちゃんみたいな人と結婚したかった。

修ちゃんは持っているスペック以外にも素敵な所がたくさんあるから、若干話が違っては来ちゃうけど、とにかく私は、ごく普通でいいから、安定した堅実な生活を約束してくれる旦那様を探していた。



だって、父みたいな人に、振り回されるのは絶対に嫌だったから。

結婚相手は、普通のサラリーマンでいい。

一般的で、平凡な家庭を築いてくれる人がいい。

夢がないってバカにされることもあったけど、本気でそう思いながら、私は大人になった。



なのに、私はどうしちゃったのかな?

だんだん仕事が取れるようになったとは言え、ダンサーは決して安定した職業ではない。

いつ仕事が取れなくなるかわからないし、怪我をしたら収入もなくなるだろう。
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