少しずつ、見えるミライ
お母さんは、何でもお見通しなんだ。

もしかして、お父さんの考えてることも全部読めてたから、どんな時でも味方になって、今まで支えて来れたとか?

きっとそうに違いない。

だから、常に自分を頼る情けない夫を、何があっても認めて、助けてあげようって思えたのかもしれない。



「彼ね、私より七つも年下なの。ダンサーやってるんだけど、まだやっとバイトしないで食べて行けるようになったくらいなんだ。」

「へぇ〜、未帆にしては随分、頑張ってるんじゃない?」

「うん。だけど、やっぱり不安定な職業だし、私にはよくわからない世界だし、本当のこと言うと、不安なことばっかりだよ。」

「でも、好きなんでしょ?」

「うん。」

「じゃあ、大丈夫。本当に好きだったら、貧乏でも、何でも、幸せでいられるから。」

「うん.....あっ!! 朝陽。」

「え?」

「この人、この人!!」

「あら、可愛いじゃない。」

「でしょ?」



点けっぱなしになっていたテレビの画面に、朝陽が出演した「だって、好きなんだ」のMVが流れている。

偶然とは言え、嘘みたいにナイスなタイミングだ。



嬉しくて、夢中で画面に向かって指を差したけど、よく考えたら、特別なことでもない限り、この時間に特にヒットもしていない曲のMVが流れていること自体がおかしい。

なのに、思わずはしゃいでしまった私は、浅はかだったのかもしれない。



好きな人に思いが通じなくて悩む男の子を演じている、このMVの中の朝陽が私は好きだった。

だけど、それは一瞬にして、ただ胸が苦しくなるだけの悲しいMVに変わってしまった。
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