少しずつ、見えるミライ
まったく、人のことだと思って。

それに、どさくさに紛れて、初日から、ちゃっかり「朝陽君」とか呼んじゃってるし。



いくら何でもね、いきなりそんな重いこと言ったら、きっと瀬戸君も困ってる.......ようには見えない?

相変わらず、こっちまで力が抜けて来ちゃいそうなフワっとした微笑みを浮かべ、悪代官と私の攻防を眺めている。



「本当に仲良いんですね。亜美ちゃんの言ってた通りだ。」

「そうかな?」

「あ、そう言えば、亜美ちゃん、元気?」

「はい。この間、会ったら、ビシッとスーツを着こなしてて、すっかりOLさんでした。」

「へぇ、そうなんだ。会いたいなぁ。」

「就職すると、やっぱり変わるんですね。」

「あっ、そうだ。就職と言えば、瀬戸君って、もしかして就活しなかったの?」

「はい。」

「なんで? もったいない。学歴あるし、その人当たりの良さならイイとこ入れそうなのに。」

「追いかけてる夢があるんで。」

「夢?」

「はい。こう見えて、俺、実はプロのダンサー目指してるんです。」

「えっ? ダンサー?」

「って言っても、今はまだそれだけじゃ食っていけないんで、こうやってバイトしながら頑張ってる状態なんですけど。」
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