少しずつ、見えるミライ
彼は、今までで一番幸せそうな笑顔を見せた。

見ているこっちが蕩けちゃいそうな、とびきり可愛い笑顔を。



その瞬間、胸の奥でキュンと大きな音が聞こえた気がして、ハッとした。

あれ? 何だろ、この感じ?

さっきの緊張感とは別の、新しいドキドキが始まっちゃったみたいだ。



でも、それに驚いて油断したその隙に、更なる衝撃が私を襲った。

「えっ?」と思った時にはもう私は彼の腕の中にいて、座ったまま、頭からすっぽりと包み込まれていた。



何? 何? いきなり、どうしたの?

だいたい、これって「変な気」のうちに入らないの.......?



こうなると、もうドキドキなんかじゃ済まされない。

痛くなるほど、心臓がバクバク言っている。

純情ぶるような年でもないのに、恥ずかしくなるほど身体がどんどん強張って行く。



「.....未帆さん?、驚いちゃいました?」

「..........。」



黙って頷くと、彼は私を愛しそうに抱きしめ直しながら、耳元で囁いた。

初めて聞くような、甘くてセクシーで、少しだけ掠れた声で。
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