むとうさん
「私も鯛焼き食べたいな。武藤さんが作ったやつ。」

「買いにこいよ。少しサービスしてやるぜ。」

「じゃぁ、武藤さんが鯛焼き焼く仕事終わり迎えに行って、買いますね。」

「迎えに来るってどういうことだよ。」

「…年越し、一緒に過ごしましょうよ。」

「あいつらに露店任せるってことかよ。」

「箱根にでも宿とって、そのまんま初富士拝みましょうよ。私のワーゲン、武藤さんのベンツより小回り効くから、川崎大師周辺の細い路地も簡単に抜けられますよ。」

武藤さんは一本箱から取り出し一吸いすると、テーブルに肘をついて頭を手に預けてしばし黙った。

「…悪くないな。」

「宿、急いで探しときますね。刺青大丈夫なように、部屋に温泉ついてるとこ探します。」
武藤さんは頬杖をついて表情を変えないまま正面を向いている。

柏木さんの サイドカーの酔いが遅れてくる。私は武藤さんの肩に控えめに、頭をもたれて着て行く服について考えた。

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