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津田家の奥さまは不安定で卵が育ちにくいらしく

彼女の切実な思いを聞き

私は考えた。

若く健康な私をうらやむ奥さまが不憫に思えたが

津田家でも代理母となると

私の血縁が増えることになる。

北城家は何も知らされず

規律に厳しい母はたまげるだろう。

家出した娘が行く先々で子を増やしていることに。

私は俄然楽しく思えてきた。

自分の人生がだ。

どんな形であれ

人に必要とされることに私は喜びを感じた。

津田家は不動産を数多く所有しており

都内にも巨大なビルがいくつもあった。

私は契約通り

産後三ヶ月間育児に専念した。

愛くるしい我が子を胸に抱き寄せて

涙を浮かべた奥さまと寄り添う旦那さまに見送られて

私は津田家を去った。

真司はご夫婦にとって待望の子だ。

大切に育てられるだろうと思った。

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