恋は盲目 Ⅱ 〜心を見せて〜

私は半分になっていたカクテルを一気に

口の中へ入れた。


その時、唇を塞いだ雅樹の唇。


うそ…なんで…

私ちゃんと好きって言ったよね。

(ゴクン)


カクテルが喉を通る。


頭部を固定され、雅樹の舌は唇を割って

進入してくる。拒もうと歯を閉じると上

唇と下唇を交互に唇で甘噛みし、時には

リップ音をわざと立て羞恥心を煽る。


やめてほしいと雅樹の腕ににすがりつく

が、一向にやめる気がない。


音がいつも以上に聞こえ、賑やかだった

店内が一気に静けさに変わる。


そしてたくさんの視線が背中に突き刺さ

る。


そして、聞こえるBGMとマスターの笑い

声。


「はい、そこまでにして続きは帰ってか

らしてくれるかな⁈」


マスターが笑みを浮かべ、中断するよう

促す。


「チッ…キスぐらいいいでしょう」


「ここは、俺の店なの。ほっといたらそ

れ以上のことしだしたろうが…他のお客

さんに迷惑だからさっさと帰れ……」


邪魔されて不機嫌そうな雅樹は、財布か

らお金を出し、昨日の分と一緒に支払っ

てくれた。


手を繋がれお店を出ようとすると、賑や

かさが戻った店内から声がかかる。


もう…このお店に来れないじゃない。

店の扉が閉まる。


「頑張れよだって…どうする⁇」


「知らない…私、帰るんだから…」


「じゃあ、一緒に帰ろう」


「どこに⁇」


「早希の部屋…」

******************


雅樹が、こんなに甘い男だとは思わなか

った。


私の部屋に着くまで、何度熱烈なキスを

したのだろう⁈


タクシーに乗れば、10分ほどで着く距

離を歩いて帰った。


途中交差点で足を止めれば、繋いだ手の

甲に何度もキスをし目が合わなければチ

クッと走る痛み。


誰もいない路地に入ると、腕の中に捕ま

りほのかに香る甘い香り。


おでこをつけ触れそうで触れない距離を

保ち意地悪く笑いキスを待っている。


キスしようと目を閉じれば、離れる唇。


「目を閉じるなって教えなかった⁈」

「なんでダメなの⁈」
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