しろっぷ
「・・・はい。世界のあちこちで」
 オーナーは特に自慢する様子も見せず、淡々と返事。
 しかし、ゆかりにはいまいちピーンとこないため、どれだけ凄いのかわかっていない。
「やっぱり。オレ・・・いえ私、あなたの指揮された音楽が好きだったんですよ」
「・・・どうも」
「特に5年前のヨーロッパツアーで見せたあなたの指揮、最高でした」
「・・・あ、ありがとうございます」
 この時ばかりは元指揮者のオーナーは照れてしまい、少し目線を逸らしながらシルバー製品磨きを再開。

 この人そんなに凄い人だったんだ。
 まあ確かにいきなりアレを始めたりするけ・・・、あ!また始まった。

 自分の好きな音楽が流れ、元指揮者のオーナーは飲み物を混ぜる棒をタクトのように使い、貴人はその美技をマジマジと観察。
 一方、ゆかりはそのようなことに興味がないため、レモンティーをすするように飲んでいた。
< 106 / 306 >

この作品をシェア

pagetop