しろっぷ
 思いとは裏腹にゆかりは頭を下げる以外の選択肢はなく、嫌々ながら頭を下げることに。
 それから時間は更に過ぎ、貴人はパソコンでの操作を止め、今度は書類に目を通す。
「おいアレだ!」
「は、はい!!」
 ようやくここでチャンスとばかりに例のボールペンを胸ポケットから掴んで出した。
 ボールペンがこの現状を打破してくれると信じ、座っている貴人にそのボールペンを渡すため近づいた。
 と、ボールペンを渡すのに必死だったためパソコンのコードに足を救われ、ゆかりは倒れそうになり、貴人はそれをキャッチ。
 二人の顔の距離は目と鼻の先でこんなに近づいて貴人の顔を見るのは初めてだった。
「す、す、すみません」
 一瞬ドキッとしたことを隠すかのようにゆかりは慌てて貴人から離れるため、身体を起こす。
 その際のゆかりの顔は少女のように照れ、それを見た貴人も席に立ち、スマートにゆかりに近寄った。
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