歩道橋で会おうね。







廊下の片隅で、母さんたちはいた。

僕は音も立てずに近寄った。




「ごめんなさい幸雄さん。
まさかハルキが断るとは思わなくて」



母さんが頭を下げていた。

幸雄さん?は腕組をしながら溜息を吐いた。



「だから男は嫌いなんだ。
ハルキって名前も、普通は女だろう。
漢字も遥かな希望で、女の子らしい名前だし。
それなのに男が来た。
驚いたよさっきはね…」

「確かに正式にハルキを男だと言わなかったワタシが悪いんです。
ごめんなさい」

「まぁ別に良いさ。
さすがに性別を変えろとは俺も言わないしな。
…でもさっきの対応はどうかと思う。
友達と別れたくないって…信じられねぇな。
どーせ別れるくせによ」

「ハルキに仲の良い友達がいることは知っていました。
でもそんなのウワベだけの関係だとばかり…」

「文菜さん、君の注意力不足だね。
まぁ君との結婚は決まったものだし、水川財閥の名もあるから、ハルキくんを施設へいれることは駄目だし…。
親の言うことは絶対だということを、教えてやるべきだな」

「ええ…」

「ところで聞きたいんだが、ハルキくんの実の父親はどうした?
死別と聞いているが、俺らは結婚するんだ。
本当のことを教えてもらえるか?」

「…ハルキの本当の父親は、名前をワタシは知りません」

「知らない?可笑しいだろ、どういうことだ」

「ワタシは学生時代、地元を牛耳っていた不良軍団の1人に捕まり、犯されて。
それで身ごもったのがハルキです」

「は…?マジかよ、信じられねぇ。
てか堕ろさなかったわけ?」

「ワタシの父親が許さなくて。
堕ろさなかったら殺すと脅されて…。
仕方なく生んだのですが、父親はハルキに変なことばかり教えて」




次々と出てくる、僕の秘密。

僕は2人から見えない死角の柱の陰で、息をひそめていた。









< 203 / 259 >

この作品をシェア

pagetop