歩道橋で会おうね。







ハルキくんは、寂しそうな瞳を伏せた。



「…知っているんでしょう?僕のこと」

「…うん」

「許せるんですか?
僕は過去、あなたをいじめたんですよ。
忘れたわけではないでしょう?」

「…忘れられるわけ、ないじゃん」

「あなたから声を、歌を奪った僕を、許せるんですか?」

「…」

「僕はもう、この間の僕とは違うんです。
全て…思いだしたんです。
ですから…あなたの知る僕ではありません」

「…」

「それでも言えるんですか?
病室で歌った歌を、僕に歌えるんですか?」

「…」

「…そんなこと、出来るわけないですよね。
僕はあなたの声を無くしただけではなく、親友も守れなかったんですから」

「…」

「…」





「馬鹿っっっ!!!!」




私は大声で叫んだ。




「何よ!
さっきから聞いていればネガティブなことばかり!
私が誰を好きになるかなんて、私の勝手でしょう!?

確かに許せないよ!
私は歌うのが大好きだったんだから!
でも、声を失って嫌だったことは、歌えなくなることと話せなくなることだけだった!

叔母さんも叔父さんもアユもアックンも先生たちも、私に優しくしてくれた!
声を失わなければ、そんな“当たり前”の日常が大事だとは思えなかった!
ハルキくんは私に“当たり前”を教えてくれたんだよ!

銀じゃない水川遥希に会ってからも大切な、忘れられない時間だった!
ハルキくんに会って、初めて私はハルキくんに恋をした!
ハルキくんに会ってから沢山泣いているよ!

ハルキくんが銀だってわかっても、嫌いになんてなれなかった。
私はきっと、初めてこの歩道橋で出会った瞬間から、ハルキくんのことが大好きだったんだから!

ハルキくんは今まで忘れていたんだよね?
なら私だって忘れられるはずだよ!
過去は大事だけど、本当に大事なのは今!
今が幸せなら、過去だってどうでも良い!

ハルキくんを好きになって、後悔したことなんて1度もないわ!!」







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