鳥籠の底は朱い道
家に着いて黒馬の前に立つ朱道。
黒馬はやはり戻ってきたと、まるで勝利したかのような笑みでいる。
「さて、さっさとこっちに来い。すでにエサは待っている」
「……」
朱道は今のところ言われるがまま黒馬について行く。もちろん向かう先はあの殺人部屋。今日でおさらばする部屋である。
すでに中には一人の男がいた。どうやらここに来た理由も曖昧なんだろう。何が起こっているのか分かっていない。
いつも通り黒馬は部屋の外で見ている。だが朱道はやる気のない表情のまま言う怯える男に言う。
「あんた用ないから失せろ。戦うって言うなら別だけどな」
「ひっ」
男は怯えながら困っている。だがそれは消えろと言われて逃げる道がないから。
だから朱道はいつもは封鎖されている扉を破壊し道を作る。
すると男は吸い込まれるようにして逃げ出して行った。
もちろんそのことを全く気にいらない目つきで睨む黒馬が部屋の中に入ってくる。
「――どうゆうつもりだ朱道。さっさと追って来い。そうすれば軽い罰で許そう」
「嫌だね」
「朱道! 貴様何を言ってるのか分かってるのか。お前は俺の――」
「――別にオレは親父のために生きてるんじゃない。これからのオレは自分の思った通りに生きる。この力を証明するために生きる。そう決めたんだ」
「逆らうというのかこの俺の命令を」
「命令? それはオレの親であるからの権限か」
「そうだ。俺はお前の父であり、今の今まで育ててやったんだ。その感謝も忘れてよくそんなことが言えるな」
「オレはこの力を殺人に使う時は“力”を持つものに対してのみと決めた。だから親父の持つ権限という“権力”を絶つためにオレはこの力を使う」
瞬時に立ち込める殺気。
その矛先は間違いないなく黒馬に向けられている。そのことに黒馬も気が付いている。
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