記憶と。
しかし高校にいったからといって何かができるわけでないような気もしていた。
僕は、いろんなことを考えながらも、少し真面目に考えてみることにした。
しかしどんな高校があるのか、通学時間はどのくらいなのか、それさえわからなかった。
しょうがないので昼休みに担任に相談に行ってみたりもした。
先生の話では、綾子の目指す学校はとりあえずは遠い存在ではないことを教えてくれた。
大学の話も聞いたが、一般入試ではやはり難しいが、高校でがんばって推薦を取ればなんとかなるかもしれないという話も聞いた。
僕はとりあえず高校でゆっくり考えればいいかな、くらいで綾子にそのことを伝えに教室に戻った。
 教室に戻ると、綾子の姿は無かった。
「健二、綾子は?」
「あ、お前どこいってたんだよ。」
「職員室だよ。進路、聞きに行ってたんだよ。で、綾子は?」
「高木の親父さんが倒れたとかで、今家に帰ったよ。」
「倒れた?」
なんだかとても嫌な感じがした。
僕は学校が終わるとすぐに綾子の家の近くまで行ってみた。
玄関の前で、2,3回深呼吸をして、インターフォンを鳴らした。
しかし、中には誰もいる感じではなかった。
玄関には鍵がかかっていた。
僕はどうしようもなく、自分の家に帰った。
 それから、綾子は学校に来なくなった。
そして綾子が学校に来なくなって3日がたった。
出席の時、担任は綾子を喪中だといった。
「喪中・・・?」
「お前聞いてなかったのかよ。高木の親父さん、亡くなったらしいぞ。」
僕は心臓にすごい衝撃を受けた。
会ったことの無い綾子の親父さんの死での衝撃ではなかった。
それは交流が短い友達が転校するというだけで、あれだけ泣いていた綾子を思い出したからだった。
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