記憶と。
 僕は、少しずつ理解し始め、健二の電話の内容に頭が可笑しくなりそうだった。
いくら何かが在りそうな感じがしていたにしても、自分の事だと思っていた。
それも、なんで綾子が。訳が解らなかった。
ほとんど上着も、手袋もせずに、僕は家を飛び出し、必死にバイクを飛ばした。
バイクに乗っている間、ずっと電話の内容の意味を考えていた。
15分以上にバイクに乗っていたが、それでもぐちゃぐちゃな頭では、なにも考えることが出来なかった。
それでも、僕は必死にアクセルを開け続けた。



 季節は夏になりかけようとしていた。
すでにクラスでは最初の頃の緊張感は無くなり、それなりにみんなが打ち解けていた。
僕と綾子は、小学校の地区は違っていたものの、道がまったく同じで、いつの間にか一緒に帰るのが当たり前になっていた。
少しずつ、綾子が近い存在になり始めていた。
そんな帰り道、綾子にある女の子の転校の噂を聞かされた。
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