たった一人の甘々王子さま
『.....ユーキ、もうすぐ下に着くから動かないで待ってて。電話より会って話を聞くわ。』
エリーは言い終わると電話を切った。
切れる直前にエレベーターの到着音が聞こえたのでもうすぐこっちに来るのは想像できる。
優樹はスマホの画面を確認して通話終了の文字を消した。
大きなため息を1つつきながら。
「ユーキ!」
エリーの声が聞こえて俯いていた顔をあげた。他の利用客にぶつからないようにうまく避けながら優樹のそばまで駆け寄ってくる。さすが武道を身に付けたエリー。身のこなしが巧い。
優樹がその場にいた安堵でエリーは優樹を抱き締めた。
「よかった.......ユーキに会えて.......」
軽く息が上がったエリーは抱き締めたまま離さない。
ホッとため息も出る。
優樹もそっとエリーの背中に手を回す。
「ユーキ、待っていてくれてありがとう。
食事はルームサービスを取るから私の部屋に来て?話はそれからよ。」
『ギュッ』と少し強く抱き締めてから腕の力を弱めたエリーは、優樹の目線と合わせて移動する旨を促す。
『コクン』頷くだけの優樹の手を取り、来た道を戻るように歩き出す。
エリーの反対の手には優樹のお泊まりグッズが入ったキャリーケースがある。
「ユーキ、心配しないで。私がいるんだから。ね?」
エレベーターの前に来たとき、エリーの声が優樹の耳に届いた。
しばらく待つとエレベーターが来た。
エリーに手を取られ一緒に乗り込みしばらく無言で過ごす。
同乗した利用客はいないのでエレベーターは二人っきり。
誰の視線も向けられることがないので優樹の心はマイナスのことばかり膨らんでいく。
少し後ろにたつ優樹に視線を送りながら
『今はなにも言わずにいよう』
とエリーも現在地を知らせる階の数字を見つめている。
目的の階に到着したときには、優樹の左目から一筋の涙が零れた。
「ユーキ、着いたわ。さ、こっちよ。」
引っ張られるように歩き、部屋の中へ。
ヤッパリというかなんというか.....
良い部屋をご利用で.......
「ユーキは此処に座って。すぐルームサービス取るわね。」
エリーは優樹を座らせて、すぐに電話をいれる。
優樹は座り込んでもソファーに凭れることなくそのまま横に倒れた。
倒れた先にクッションがあったので、涙で濡れるのもお構いなしにそれに顔を埋めた。
電話を終えたエリーはそんな優樹の姿を見て、取りあえず飲み物を.......と、ティーセットの用意をする。
準備しながら『ユーキ?コーヒーより紅茶にするからね。』と一応声はかけて。
「ちょっとお菓子でも摘まみたいわよね~何にしようかしら?」
なんて準備しているエリーのスマホにトムからメールが入る。
エレベーターに乗っているとき、エリーは器用にも片手でトムに連絡を取っていたのだ。
「あら?結構お早いお返事だこと。」
エリーはスマホのメール画面を開いて内容を確認する。
「あら~やっぱり、そういうことになっていたのね.......アイツ、諦めてなかったのね。優樹は知らないとはいえショックを受けるのは当然よね。私も話す手順を間違えないように気を付けなきゃ。」
さて、優樹の知らぬこの話、どんなカラクリがあるのやら。