たった一人の甘々王子さま


と、その時。
ドアをノックする音が聴こえる。


「おかしいわね.......トムはまだ会議中のはずだけど?」


『はーい!』


と、エリーは迷いなくドアを開けた。
ここの部屋は一般客が紛れる事もないだろうから、心配はない。
ホテルのスタッフか、エリーの身内くらいだろう。


ガチャリ―――


ドアが開いた途端、


「エリー、大変だよ!浩司が.........例の令嬢に連れ去られそうだよ!ユーキがいるってことわかってての強行突破だ!この件は、ユーキにバレる前に片をつけないと.......」


トムが大声で叫びながら部屋の中に入ってきた。
エリーの顔はみるみるお怒りモードプラス呆れモード。


「......トム。作戦会議をしたい所.......申し訳ないんだけど、ユーキはもうこの部屋に居るの。残念だけど、今のあなたの声でバレたわよ.........」


腰に手を当て、ドアにも体重を預ける。


「え?ユーキ来てるの?まだ約束の時間には早いよ?」


腕時計を見ながら浩司と優樹の待ち合わせ時間を確認する。
トムは、予定通りじゃないよ.....なんて顔をしている。


「悪かったわね!私が暇だから食事に誘ったのよ!」


エリーとトムの喧嘩が始まりそうだ。
この時、やっと優樹はソファーから起き上がって背もたれから顔を出してエリーとトムの方を見る。


「そんな、エリーを攻めるつもりはないよ?ただね、不安にさせたくなくて水面下で片付けようと動いててさ、浩司の件は.......」


トムがここまで語ったとき、優樹は思いきって問いかけた。


「トム、浩司に見合いの話でも出てるの?」


「「ユーキ!!」」


二人が優樹の方を振り向く。


「ねえ、教えてよ.......浩司、最近帰りが遅かったんだよ。もしかしたら、そのおねーさんと何かあるの?別れなきゃいけないの?昨日も傍に居たのに.......なんで?」


優樹の目からは涙が。
二人がここまで知られたのなら話すしかないだろう.....と、トムは優樹の側へ。


エリーは用意していたティーセットの準備を続ける。
一息おいて、トムから話を切り出す。


「ユーキ.........まず始めにこれだけはわかっててほしいんだ。コージは、ユーキの事を大切に思ってる。だから、ユーキに被害がかかる前に手を打ってるんだよ。」


優樹はゆっくり頷く。
トムはさらに言葉を続ける。


「最後まで聞いてくれるかい?コージは今ユーキの為に必死に戦っているんだよ。」


優樹の前に腰かけたトムがゆっくりと語り出す。


「うん。わかった」


トムの目を見て優樹も聞く体制にはいる。


「まずね、今の私たちの仕事のこと知ってるかな?」


トムの問いかけに優樹は少し間を開けて


「......父さんの会社とエリーのパパの会社が、共同で何か作ってるんでしょ?で、それにはとてもたくさんの資金が必要で、協力してくれる会社を探してる.......ってとこかな?」


思い出しながら答えていく。


「流石、ユーキだね。その通り。でね、その協力してくれるとある会社の社長令嬢に言い寄られているのが.......コージなんだよ。」


目を見開き、優樹の動きが止まったのは言うまでもない。
トムも優樹を見つめながら話していく。


「田所コーポレーションへの協力と、自社の役員職をちらつかせてコージを半分脅しているんだよ。」


優樹は両手で顔を覆う。
言葉なんてもちろんでない。
エリーが用意していたティーセットなんて手付かずのまま。


「その社長令嬢なんだけどね、いつユーキへの接触を試みるか心配で.......ギリギリの処でコージは絶対にユーキには会わせないようにって踏ん張っているんだよ。」


トムはエリーの用意したコーヒーを口に含んだ。


「ユーキ、会ったことないでしょう?その社長令嬢らしい人に。」


エリーの問いかけに優樹は頷いて答える。
ホッとしたのも束の間、トムは驚く事実を告げる。


「ユーキ..............申し訳ないことに、その社長令嬢をけしかけたのがショウだったんだよ........どうやら傷付いたユーキを自分の元へ連れてこようと考えていたみたいだ。」


『ショウの傍に居たのに気づくのが遅くて本当にすまない。』
と、トムは頭を下げた。
その言葉に怒りを露にしたのはもちろんエリーだ。


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