たった一人の甘々王子さま
「えっ?ショウはユーキを諦めていなかったの?もぅ、釘を指しておいたのに........私だと効き目なんてなかったわね。トム、ペアを組むのやめたら?」
「ちょっと難があるところは認めるけど、アイツはアイツで仕事が出来るヤツなんだよ?」
こんなときでも、仕事上のペアを気遣うトムは大人だ。
「で、いま此処にトムが居るってことは、コージはどうなってるのよ?」
エリーも今更ながらにトムへ確認をする。
「それがね.......解らないんだよ.....」
急に頼りない返事に変わった。
もちろんエリーが怒るのも無理はなくて........
「ちょっと!解らないってどういうことよ!!」
トムに掴みかからんとするエリー。
すぐに手を合わせて謝罪のポーズをするのはトムで.........
「だから、作戦会議をしたくて此処に来たんだよ!」
トムが困り顔で訴えてもエリーは苦虫を踏み潰した顔を.......
「作戦会議も何も、コージがいなくなった方が問題でしょ?.........もしかして、令嬢に連れ去られたって言うの?仕事中に?」
まずはトムを質問攻め。
「う~ん.......仕事中というか、移動中というか.......」
ハッキリしない物言いに眉間の皺は深くなるエリー。その顔を見たトムも大きな体を小さくしながら
「会議と会議の合間にやられたって感じ?トラブルが起きたって神業のように持っていかれた感があるよね。凄かったよ。手際が良いって事だよね?」
他人事のような.....言い方。
それまで無言の優樹も握っていた拳が更に強く握られていく。
「と、云うことはよ?コージは令嬢ともしかしたら何処かで二人っきり...........ってことになるわけでしょ?コージを誘拐するくらい手にいれようと躍起になっているんでじょう?コージの事だから襲われてるなんてあり得ないでしょうし.........」
エリーなりに、現状整理をしてみる。
考えながらふと思いついて
「ねぇ、トム。GPSで現在地くらい確認済みでしょ?」
その言葉にトムの顔が暗くなる。
「コージのスマホ、電源切られてるみたいなんだよ。しかし、まだこのホテル内に居るはずだけど........」
「あぁもう!」
エリーも苛立ちが押さえきれないようだ。
トムの言葉尻に被さるように叫んだのだから。
「最近、気がついた.........浩司から知らない香りがしていたんだ.........そっか...........そのおねーさんの匂いだったんだね。」
両手で覆った顔を少し出した優樹は、伏し目がちに呟いた。
トムは頷きもせず、優樹を見つめているだけで。
暫しの沈黙のあと、エリーが
「ユーキ?今まであなたに被害がなかったのは私たちが本業で忙しかったのもあるんだけど、助っ人がいたからなのよ。」
また、優樹の頭に?マークが飛び交う言葉を告げた。
「助っ人?」
首をかしげながら、優樹は同じ言葉を呟く。
「ごめん。まず謝らせて。............ユーキには、辛いことだったと思うけど、言わせてね?」
エリーは優樹に謝罪をして断りをいれる。
優樹も何に対してなのか分からなかったが、軽く頷いた。
「.......昔、ユーキは日本の社長令嬢に酷いことされたんでしょ?双子の弟の代わりだって聞いたわ。...........この件は、パパがユーキのパパと話しているのを聞いたことがあるの。」
優樹の動きが一瞬止まり、固まる。
エリーも優樹の隣に座りそっと抱き締める。
「だからね、『社長令嬢』って言葉はユーキにとってトラウマの1つでしょ?いかにもお嬢様オーラなんて振りかざしている女って同じ空間に居たくもないでしょ?」
エリーは、俯く優樹の頭を撫でて泣き出しそうな優樹を宥めていく。
「エリーも社長令嬢でしょうが.........」
トムは『急に何を言い出すの?』って呆れ顔。そんなトムに対して
「え?私は違うわよ!私はエリー。そこら辺の何もできないお嬢様と一緒にしないで欲しいわ!」
愛するダーリンに強気な発言。
『あんな猫撫で声で男を惑わす仮面を被った女、私だって大嫌いよ!その点、ユーキは可愛くて大好きだわ。』
って、優樹の頬にチュッとキスをする。
「ごめんね、話が反れたわ.......兎に角、暫くこの部屋から出ない方が良いわね。いま、その助っ人が社長令嬢を貶めているだろうし。」
エリーの顔がちょっと怖いです.......なんて、優樹が思ったのは秘密で。