たった一人の甘々王子さま


「ユーキ?疲れたなら。隣の部屋のベッドで寝て良いわよ?ここ、ベッドルーム3つあるから。私は一番奥の部屋を使ったからここの手前の部屋なら.......ほら、どう?」


立ち上がり、優樹の手を引きエリーが案内した部屋は優樹の部屋よりも勿論広い可愛らしい寝室だった。


「セミダブルだし、ダーリンと寝るにはちょっと狭いけどね?」


優樹を引き連れてベッドの側まで来ると縁にエリーは、優樹を座らせる。


「うん、ありがとう。お言葉に甘えて、そうするよ。」


そっとベッドに横たわりながら優樹はエリーにお礼を言う。


「シャワールームはこっちだからね。自由に使ってね。あ、私達パパのところに行って様子見てくるから、ユーキは此処にいてね。」


『絶対に、この部屋から出ないでね!』


強く念を押したエリーは、トムに声をかけて出ていった。


「浩司、頑張りすぎだよ.......」


優樹はポツリと呟いてそっと目を閉じて軽い眠りに入った。


―――――――――――――――――――


どれくらい寝てしまったのだろうか。
優樹は喉が乾いて目が覚めた。


「あ.......今、何時だろ.......?」


目を擦りながらゆっくり起き上がる。
『えっと、ここは.......ホテルの.....エリーの部屋だっけ?』
取りあえず、部屋を出て冷蔵庫を目指す。


「エリー、ごめんね。失礼します。」


この場に居ないエリーに断りをいれて、冷蔵庫を開けてミネラルウォーターを手に取る。ペットボトルはしっかり冷やされていて、寝起きの優樹にとっては心地よい温度。


「頂きます。」


まず一口含んで冷たさを口の中で感じる。
ゴクリと、飲み込んで一息つく。
ソファーに座ろうかと移動しながらもう一口.......と、口を付けたところで廊下から人の叫び声が聴こえる。


『エリーがトムと言い合いながら戻ってきたのかな?』
なんて思いながら、優樹はドアに近づく。
大人しく、ソファーに座って待っていればいいものの、何故かその時の優樹はドアを開けてしまった。


「エリー、お帰り.......」


お迎えの言葉をかけて、半歩廊下に足を出した。
すると、少し離れたところにいたエリーが叫んだ。


「ユーキ!早く部屋に入って!!」


「ユーキ!早く!早くドアを閉めて
!出ちゃダメだ!!」


一緒にいたトムまでもが焦っている。優樹は取りあえず、言われたようにドアを閉めようとドアノブに置いたままの左手を引き寄せた。


が、


「待ちなさい!逃がさないわよ?」


エリーの泊まる部屋のドアの近くに大きな花瓶があり、そこには有名華道家が生けた花にがある。
その影に隠れていたであろう一人の女性が優樹の動きを阻止した。


「ほら、早く下がって!」


上からの物言いに『この人が?』なんて思ってももう遅い。
優樹とその女性はドアの中へ。
エリーとトムは閉め出された。


「エリー、早くカードキーを!」


急かすトムに、エリーの顔は手元を見て目を見開く。


「あっ!パパのところポーチをを置いてきてしまったわ!あの中に入れておいたのよ!探し回るのに夢中ですっかり忘れてたわ.......ユーキが居るから中には入れるのだけれど.......」


額に手を当てて項垂れるエリー。


「きっと、今のユーキはそれ処ではないはずだよ?」

トムのその言葉でエリーも焦る。
しかし、素早く切り替えて


「トムは、コージを呼んできて!」


トムはすぐ行動に移した。


「わ、わかった。エリー、君は?」


「私は私のやり方で戦うだけよ!」


エリーは走り出したトムに力強く答えた。


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