たった一人の甘々王子さま
8 教育実習


浩司と優樹が出会い、同棲し、恋人になって早1年。
少し、順序が違う始まりの二人だが、順調に愛を育んでいる。


優樹も大学3年、教育実習の時期がやって来た。
優樹の夢は『体育教師』
浩司も応援してくれた。
条件、付けられたけど........


「優樹の夢? 勿論、応援するよ。 だから、近い将来に俺と結婚してずっと傍に居てね。あと、子供はね、優樹さえよければ3人は欲しいね。」


「は?ばっかじゃない?何で今、結婚の話?それも子供のことまで!自分はまだ学生です!」


そんなやり取りをしていても、明日から始まる教育実習にドキドキしながら準備をしていく優樹。
それなのに、浩司は違う意味でドキドキさせてくる。
優樹が甘くとろける言葉をこれでもかってくらい与えてくれる。


「結婚は、優樹が俺の傍に居てくれるっていう証明でしょ?今すぐにでも出来ます。って言うか、今日したいくらい。」


「今すぐって.........。そんなの早くても、大学卒業してから。父さん達にも許可もらってないから無理。......さて、あとはファイルが..........」


なんとかこの話から話題を変えようとしてみたが、巧くいかない........


「へぇ~、両親の許可が得れば今すぐにでも結婚してくれるんだね?解った。社長に許可もらってくる。待ってて、近いうち時間作るから。」


今日一番の笑顔を見せる浩司。
キュンとするくらい大好きな笑顔なのだが、今は、ちょっと困る。


『墓穴掘った........』


と、思っても時既に遅し。
浩司の顔はもう作戦を練っている感じが......
『社長の予定は川村さんに聞いて......』とかブツブツ言ってる。


「あのさ、明日からなんだよ?教育実習。しかも、今、準備中。結婚、結婚って煩い!浩司、邪魔!」


そうなのだ。優樹は自分の部屋で準備中。
『晩ごはんの用意が出来たよ』と呼びに来た浩司は、ずーっとドアにもたれ掛かって優樹と会話を続ける。と、いうか邪魔をする。


「ねぇ、優樹。教育実習に行く学校、本当に男子校じゃないよね?」


「しつこい!」


お世話になる学校なんで、決まった時点で伝えておいた。女子高なら良かったのだが、共学なのだ。男子校だったら絶対に反対される。理由は聞かなくてもわかる。


「いい?ちゃんと解ってる?俺はね、若い男に優樹が『狙われたりしないか』とか、『襲われたりしないかな』って心配なだけ。優樹、可愛いって自覚ある?」


ほら、きた。二言目にはこれ。
優樹もそろそろ聞き飽きた。


「は?またその話?格好いいって言われてるのに、可愛いって............ナイナイ!あるわけない!」


優樹は手を顔の前で振り撒くって否定する。
浩司は部屋の中に入ってきて、優樹の手を掴む。顔は、ムッとしてるのが優樹でもわかるくらい。


「優樹は可愛いの。ほら、今も頬を赤くして..........その顔、俺以外の男に見せたら駄目だからね?分かってる?」


いつもの甘い台詞に優樹は戸惑ってなにも言えない。
言い返したくても、浩司に見つめられると何も言えなくなる。
未だに慣れない。
ただ、口をパクパクさせるだけ。


「ほら、そうやって可愛く俺を煽るし..........」


浩司との視線が交わり、空いている手はスッと優樹の背中に回る。
顔が近づく..........
優樹と浩司の唇が触れそうに........


「ちょっと!待てって!」


慌てて顔を背け、浩司の胸を手で押し返す。キスができなかった浩司は不満げだ。


「ば、晩ごはん!食べる!ね、食べよ?向こう行こ?準備終わったから。はい、この話は終わり!」


そう言いながら捕まれた手を払い、立ち上がって、


「ほら、行こ?折角浩司が作ったのに、冷めちゃうよ。自分、食べたら先にお風呂はいるからね?良い?」


「........良いよ。俺も後から入るし、そのあとで優樹食べるから。」


『ふぅ。』と、溜め息をついて浩司も立ち上がる。
そして、優樹より高い目線の位置から微笑む。


「この間の試合以来だね、俺の痕付けるの。何処に付けようかな~」


「は?見えるとこなんてダメに決まってるじゃん!」


優樹は速答。
浩司はニヤリ顔。


「そう言うってことは、見えない処なら良いわけね?分かった。此処に付けてあげる。」


と、浩司が廊下を歩きながらうなじを指差した。


「ちょっと!そこダメ!バレるって!だから嫌だって言ってンの!」


「優樹は俺のなの。男避けの為に付けるのに。俺も優樹のだから、同じところに痕付けていいしさ。ね?」


こんなじゃれ合い、1年前は想像もつかない。


キッチンに入り、準備を始めた浩司。
優樹も手伝って、二人で並んで晩ごはんを食べた。


『あ、このサラダドレッシング変えたんだね。美味しい。』


『ちょっとね、作ってみたんだよ。先週行ったお店のアレ、真似してみた。』


『うん、あのサラダ美味しかったもんね。また食べられるなんて嬉しい!』


『それはよかった。』





楽しい食事の後はお風呂で癒されて、夜は優樹も美味しく食べられました。



『ンッ、もう..........浩司の、バカァ..........』


『優樹が可愛いからいけないんだよ?』


なんてね。

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