君愛。
体の痛みと共に目を覚ますと、見慣れない真っ白な天井と薬品の匂いでここが病院だ、ということに気が付いた。



私生きてたんだ。



ベッドに寝転んだ侭ぼーっとしていると、白衣を纏った人が病室に入って来た。


その容姿を見たところからその人はきっと医師。


「目が覚めたんですね?気分はどうですか。」


「普通です。」


素っ気ない態度で質問に答えると、医師に伝えられたのは車との衝突事故で右足を折った、ということだった。


思いの他軽症だったことに驚いていると、入院期間は2週間だと知らされた。


あの侭死んでも良かった。


そう思いながら病室を出て行く医師の背中を見送る。


ベッドの隣に置いてあった車椅子と松葉杖を見ると、
私は松葉杖を選び
病院内を探索してみることにした。


探索すると、私の病室は3階にある事を知った。


しばらく松葉杖で動き回っていると、疲れてきて車椅子を選ばなかったことに後悔した。


動いている間も頭に浮かぶのは、雄大のことばかりだった。


また頰を伝う涙。


私って本当に弱いな。


その時だった、目の前にある病室から嘔吐しているような声が聞こえてきた。


私はふとその病室のプレートを見るとぴたり、と涙が驚きで止まった。


プレートには


山下雄大


確かにそう書かれていた。
心臓の鼓動が一気に早くなるのを感じた。


「雄大?」


私の手は、自然とその病室の扉に伸びていた。
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